こんにちは。いーるず(@eals634)です。
先日購入したMatepad Proを一通り使い倒したので、今回はこのタブレットの評価を私見でつらつらと書いていきたいと思います。
目次
結論
まず初めに結論から述べておくと、
「万人どころかほぼすべての人におすすめできないタブレット」
です。かなり過激な文言に見えるかもしれませんが、このタブレットをレビューするうえで前提としなければいけないことは、ハードウェアとソフトウェアを切り分けて考えるということです。
ハードウェアに関してはAndroidタブレットとしては限りなく頂点に近い位置にいると思いますし、現時点でのタブレット界の王様「iPadシリーズ」にも太刀打ちできるポテンシャルを秘めているといえます(Galaxy Tab S6というこちらもイケイケなタブレットがありますが、技適なしということで今回は除外)。
その一方で、「GMSが使えない」というソフトウェア的な側面から見た足かせが、このタブレットの価値を飛ぶ鳥を落とすような勢いで引き下げてしまっています。詳しくは後述しますが、OSの作りこみが非常に凝られているだけに残念。
GMSを導入する方法、代替のアプリストアを導入する方法もありますが、前者に関してはセキュリティリスクは免れない上にライセンス違反であり、後者に関してはGoogle系のサービスをまともに使うことができません。そもそも、このような手段を得てしなければ使い物にならないという時点で万人にはおすすめできないと結論付けることができます。
私個人の使用目的
絶対に必要とする用途
- 動画像、音声をはじめとするエンタメコンテンツ全般の消費
- スタイラスペン、キーボードを用いた書類編集等の事務作業
- ウェブブラウジング、ブログ執筆
- 持ち運び
できたらいいな!な用途
- ゲームコンテンツ
- お絵描き
- 簡素な楽曲作成
これらを踏まえたうえでレビューに入りたいと思います。
その前に、当タブレットおよび無印iPad、iPad Air、iPad Proのスペックを貼付しておきます。
Matepad Pro | iPad | iPad Air | iPad Pro(11インチ・第二世代) | |
OS | EMUI 10.1.0 (Android 10ベース) | iPad OS | iPad OS | iPad OS |
SoC |
CPU: HUAWEI Kirin 990オクタコア (2 x 2.86 GHz, 2 x 2.09 GHz, 4 x 1.86 GHz) |
A10 Fusion |
Neural Engineを |
Neural Engineを |
メモリ |
RAM:6GB ROM:128 GB |
RAM:非公表 ROM:最大128GB |
非公表 ROM:最大256GB |
非公表 ROM:最大1TB |
ディスプレイ | 約10.8 インチ、DCI-P3色域、WQXGA (2560 x 1600,280dpi)
アスペクト比16:10 |
10.2インチRetinaディスプレイ(2,160 x 1,620
|
10.5インチRetinaディスプレイ(2,224 x 1,668 フルラミネーションディスプレイ 反射防止コーティング DCI-P3色域 |
11インチLiquid Retinaディスプレイ(2,388 x 1,668 ProMotionテクノロジーとTrueTone フルラミネーションディスプレイ 反射防止コーティング DCI-P3色域 |
スピーカー |
内蔵スピーカー x 4、HUAWEI Histen 6.0サウンド効果 Harman Kardonチューニング |
内臓スピーカー×2 |
内臓スピーカー×2 |
内臓スピーカー×4 |
カメラ |
アウトカメラ:約1300万画素 (AF)、インカメラ: 800万画素 (FF) |
アウトカメラ:8MP広角カメラ
インカメラ:1.2MP |
アウトカメラ:8MP広角カメラ
インカメラ:7MP |
アウトカメラ:12MP広角カメラ/10MP超広角カメラ
インカメラ:7MP/TrueDepthカメラ |
バッテリー |
容量:約7250 mAh (標準値) |
容量:約8,756mAh
|
容量:約8,162mAh | 容量:約7,743mAh |
サイズ | 幅 約246 mm縦 約159 mm厚さ 約7.2 mm重さ 約460 g |
高さ250.6 mm
幅174.1mm 厚さ 7.5mm 重量(Wi-Fiモデル) 483g
|
高さ
250.6mm 幅 174.1mm 厚さ 6.1mm 重量(Wi-Fiモデル) 456g |
高さ
247.6mm 幅 178.5mm 厚さ 5.9mm 重量(Wi-Fiモデル) 471g |
端子 | USB Type-C | Lightning | Lightning | USB Type-C |
外部ストレージ | NM Card対応 | 非対応 | 非対応 | 非対応 |
周辺機器 | M-Pencil
Magnetic Keyboard |
Apple Pe ncil(第一世代)
Smart Keyboard |
Apple Pencil(第一世代)
Smart Keyboard |
Apple Pencil(第二世代)
Magic Keyboard Smart Keyboard Folio |
直販価格(税込)[2020/07/05時点]
※iPadに関してはWi-Fiモデルの価格 |
65,780円 | 32GB:38,280円
128GB:49,280円 |
64GB:60,280円
256GB:78,980円 |
128GB:93,280円
256GB:105,380円 |
エンタメに生きる抜群のハードウェア性能
エンタメコンテンツに関してはハードウェア面での性能が遺憾なく発揮され、相当の満足感を得ることができました。まずは何といってもこのベゼルの狭さ。画面占有率は約90%と、iPad Proを上回っています。テレビでもスマホでもそうですが、ベゼルが狭いほうが没入感は圧倒的に増します。
また、スピーカーについても上下合わせて4発のスピーカーを搭載しています。iPad Proでもそうですが、上下についているとどんな置き方をしてもスピーカーが塞がることがないので便利。また、音質のほうもHarman Kardonのチューニングが影響しているのか、非常にラウドな音が出る良い仕上がりになっています。特に低音域の出がよく、映画なんかを見る際の迫力は抜群です。他にも、4発のスピーカー、サラウンド効果のおかげなのか音像定位がはっきりとしていてこちらも映画を見る際に如何なくその効果を発揮してくれています(前に端末を置いているのに後ろから聞こえてくる、そんな感覚が味わえます)。
ディスプレイに関してはWQXGA解像度のIPS液晶を搭載。有機ELディスプレイではないものの、DCI-P3色域対応ということで発色も鮮やかで、色の表現に関しても素晴らしいの一言に尽きます。視野角こそ有機ELには及びませんが、画面はかなり綺麗と言って差し支えないと思います。
以下では素の状態、もしくはAmazonアプリストア経由でどれだけのコンテンツが利用できるのかを掲載しています。
映像
Youtube | ブラウザでの視聴 |
Hulu | Amazonアプリストア |
NetFlix | Amazonアプリストア |
U-NEXT | 〇 |
Dアニメストア | Amazonアプリストア |
Amazonプライムビデオ | Amazonアプリストア |
DAZN | Amazonアプリストア |
なかなか厳しい結果です。ただし、Amazonアプリストアさえ導入してしまえばYouTube以外は何とかなるかもしれません。
音楽
Spotify | Amazonアプリストア |
AWA | Amazonアプリストア |
Apple Music | ✕(ブラウザ版で再生可能?) |
Amazon Music | Amazonアプリストア |
LINE Music | ✕ |
KK BOX | 〇 |
Rakuten Music | ✕ |
Aniuta | ✕ |
Deezer | 〇 |
Mora | ✕ |
こちらは先ほど以上に厳しい結果に。Amazonアプリストアなしではまともに使うことは難しそうです。
書籍
Kindle | (Amazonアプリストア) |
Rakuten Kobo | ✕ |
ebook | 〇 |
BookLive | ✕ |
書籍に関しても同様。ebookが対応しているのは意外でした。
このタブレットにはEBookモードというモノクロ表示に切り替えてくれる便利な機能が付いているだけに、肝心なコンテンツが利用できないのは悲しいところ…(EBookモードだけにebookが…?)
これだけ優れた筐体を持ちながら、アプリの品ぞろえは貧弱を極めています。今後対応アプリが増えれば良いですが…
事務作業
これに関してはおそらくGMSなしでもなんとかなります。というのも、OfficeはAppGalleryにて配信されていますし、PDF編集ツールの大定番、Xodoも同じくリリースされています。
プリインストールされているNeboは優秀なメモアプリですし、WPSOfficeも搭載。
タスク管理という面においてはTickTickがリリースされており、こちらも問題はないでしょう。
ノートをとるというような場合においても、WacomのBambooがリリースされているため快適に使用できると思います。
スタイラスペンもメモ書きで使うにはもってこいですし、物理キーボードの打鍵感も悪くないので、本当に一通りの作業はこの一台だけでこなせてしまいます 。
ウェブブラウジング、執筆作業
これに関しても先程と重なる部分はありますがそつなくこなせます。横画面で見れば PCでの表示とほぼ同等になりますし、物理キーボードのおかげで執筆作業もものすごく楽です。キーボードに関してはアプリによって変換関連が上手く使えない場合があるのでそこが玉に瑕。
— EALS(いーるず) (@eals634) June 27, 2020
この前に投稿した二つの記事の本文とサムネイル、そしてこの記事のサムネイルはMatePad Proのみで作成しています。
お絵かき
お絵かきに関してはアプリによってまちまちですが、アイビスや メディバン、 Adobe系のアプリに関してはいずれも同程度の描写遅延があり、本格的なお絵かきに使用するのは厳しいかなといった印象です。しかし、Autodesk Sketchといったアプリであれば本当に同じタブレットなのかと思うくらいに遅延が少なく、快適に使用することができました。機能に関しても無料とは思えないほど充実しているので、Matepad Proとこのアプリの組み合わせはベストコンビになりうるやもしれません。何より4098段階の筆圧検知というのはミドルクラスのペンタブに匹敵するほどのものですから、これが快適に使えるのであればお絵かきタブレットとしての素養も秘めていると言えるかも。(遅延に関しては海外のアプリのほうが少ない、そんな印象を受けます。)まあお絵描き用途に使うのであれば躊躇なくiPad Proを買ったほうが幸せになれるはず。
M-Pencilの動作 pic.twitter.com/iWkyuBY5AW
— EALS(いーるず) (@eals634) July 2, 2020
音楽制作
これに関してはリリースされているアプリがそもそも弱いです。iOSであれば謹製でガレージバンドのようなアプリもあるため、やはりその差は歴然。BandLabのようなアプリはAppGalleryにおいても配信されているので、決してできなくはない、しかし不便、そんな感じです。
ゲーム
ゲームに関してはスペック的な側面よりも、GMS無しという状態がボディーブローのように効いてきます。私自身はAurora Storeを導入しているのでさほど不便は感じていませんが、素の状態だとあまりにもプレイできるゲームが少なくなんとも寂しい状態です。スペックに関してはデレステであれば3Dリッチ・高画質、PUBGであればHDR・アンチエイリアスONの状態でもカクつくこともなく動作していたので問題はないでしょう。
デスクトップモード
EMUI独自の機能として、デスクトップモードが搭載されています。私が使用しているMate 10 Proのモノはスペック的にも仕様的にも不完全な印象を持っていましたが、今回のデスクトップモードはPCライクな使い方がストレスなく行えます。タブもかなりの数を開けるので、複数アプリの同時使用もお手の物。ここにきて完成形を見たような気がします。
マルチタスク
また、デスクトップモードではなくとも画面分割とフロー機能を用いて、最大3つまでのアプリを同時に使用することができます。特にこのフロー機能ですが、画面上に仮想のスマートフォンを一台表示しているような感じで中々面白いです。2つではなく3つ。こうした点からもEMUIの作りこみを感じます。
概観
Kirin990を搭載しているのは伊達ではなく、めちゃくちゃヌルヌルサクサク動作します。そして何よりもバッテリー持ちが良い。2K解像度のディスプレイを搭載していながら、バッテリーの減少は非常に緩やかで、バッテリー切れの心配をすることがまずありません。また、重量もケース、ペンを装着した状態で785gとめちゃくちゃ軽いです(本体のみだと490g)。負荷をかけても元々がスマホ用のSoCだからなのか、あまり熱を持ちません。排熱への余力が感じられます。
Antutuベンチマーク
なぜか私の環境下だとAntutuがクラッシュしてしまうので、スコアサイトのリンクを掲載しておきます。
(ハイパフォーマンスモード)
ハイパフォーマンスモードにするとスコアが割合伸びるようで、上記サイトによれば51万点というスコアを記録しています。通常モードでも43~45万点ほどのスコアを記録していますから、(ベンチマークのスコアを信用するのであれば)実使用上不便を感じることはまずないでしょう。私自身もスペック不足を感じるような場面には今のところ遭遇していません。
周辺機器
Magnetic Keyboard
Magneticキーボードは、打鍵感こそストロークが深く気持ちがよいですが、肝心のキー配列がUS配列+少しばかり特殊です。とはいえ、バックキーがエンターキーの横にあるような不便な配置になっているというわけではなく、キーピッチに関してもしっかりとした広さがとられているので許容範囲内といった感じ。
その一方で、アプリ側の対応が何とも言えないところ。純正のiWnnを用いると、Nebo等のアプリで変換が一度しか行えないという使い物にならない仕様になってしまっています。私は今のところGoogle日本語入力を導入して快適に使用できていますが、プリインストールされているアプリでさえ対応が不完全であるというのは少しいただけないなと感じました。
キーボード自体は無接点で接続する形で、Bluetooth+ワイヤレス給電の組み合わせで動作しています。接点がないので簡単に接続することができ、中々便利。
ショートカットキーも充実しているので、ショートカットキー一発でSpotify(フロー状態)を立ち上げることも可能です。
画面ロック、ロック解除も同様にキーボードから行えるのでGood。
M-Pencil
こちらに関しては特に悪い部分は見当たりませんでした。本体にくっつけるだけで簡単にペアリング、充電ができますし、筆圧感知もしっかりしています。ただし、前述したようにアプリによっては相性が悪いのか最適化がなされていないのか、描写に遅延があったりして本格的なお絵描きに使うのは難しそうでした。一方で遅延が少ないアプリもそれなりにあるため、そういったものを用いれば実用に耐えうる程度にはレスポンスが向上します。Apple Pencilのようなダブルタップで消しゴムに変更といった便利機能が搭載されていないのは惜しい。
M-Pencilの動作 pic.twitter.com/iWkyuBY5AW
— EALS(いーるず) (@eals634) July 2, 2020
カメラ
カメラに関しては十分な作例が撮れておらずあまり踏み込んだレビューができないのですが、イン、アウトともにタブレットとして使う(ビデオ会議等)に使うには十分以上の画質を誇っているように感じます。以下はアウトカメラで撮影したものですが、最大10倍までズームできる上に意外としっかりとした写真になっていることがおわかりいただけるかと思います。
もちろんHuaweiスマホのレベルに達しているかと言われればノーですが、SoCの機能も活躍しているようでそれなりに良いものが撮れる感じです。4K/60fpsまでの撮影にも対応しているので、個人的には楽器の演奏撮りに使おうかと考えています。
悪い点
GMS非対応
GMSを失ってからその存在の大きさに気づかされました。YoutubeのようなGoogle系サービスは当然のことながら、多くのアプリに意外とGMSの処理が組み込まれています。GMSを導入することは現時点では可能ですがその穴がいつ塞がれるやもわかりませんし、それを前提として購入するのも問題があるでしょう。
パンチホールカメラ
90%という画面占有率の代償として、このタブレットの左上にはパンチホールカメラが搭載されています。
動画を見る際にはこの部分が黒帯の中に収まるので特段問題はないのですが、それ以外の場合、画面が非常に綺麗なだけにこのパンチホールが気になってしまうことが多々あります。
顔認証
この端末には指紋認証センサーが搭載されていないため生体認証は顔認証のみとなります。精度自体は悪くないですが、指紋認証よりもレスポンスが一段階落ちる印象。また、コロナ禍の中、マスクをつけたままでのロック解除ができないのも痛い点です。
周辺機器まで揃えると …
Matepad Pro自体は6万円を切る価格で購入できる費用対効果の高いタブレットですが、M-PencilやMagnetic Keyboardといった周辺機器まで揃えると価格は優に8万円を超えてきます。この価格ならiPadシリーズを買ってしまったほうが幸せになれるような気がします(フリマアプリだともう少し安く買えたりします)。
最後に
長々と書いてみましたが、こうしてみてみると悪い点に記した要因のほぼ全てが外部にあるような気がしなくもないですね。このタブレットのモノ自体は本当に良いもので、それは使っていても日々感じているところです。ただ、この価格を出して障壁盛りだくさんのこのタブレットを買うのであれば、iPad然りiPad Air然り、もしくは少し奮発してiPad Proを買ったほうが幸せになれるのではないかと思わずにはいられません。とはいえ、iPadシリーズにはない便利な機能も数多く搭載されていてバッテリー持ちもよく、その上軽量と非常に均衡のとれたタブレットに仕上がっています。iPad、ひいてはiPad Proにも対抗できるようなポテンシャルを感じさせる端末であるだけに、このGMS非対応という点は非常に残念なところです。
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